教員の副業ブログは一律禁止ではありませんが、報酬を得る前に、身分と所属先の規程に応じた許可・届出の確認が必要です。
全国共通で押さえたいのは、ブログを書く行為と、広告・販売・受託で収益を得る行為は分けて判断されること。一方、誰に申請するか、どの書類を使うかは、自治体や学校法人によって異なります。
この記事では、「教員の副業ブログは可能なのか」「公務員がアフィリエイトを始めてもよいのか」「非常勤講師にも許可が必要なのか」という疑問に、法令と公的資料を基に答えます。
最初に、立場別の結論を整理します。
立場 全国共通の考え方 最初に確認するもの
公立学校の常勤教員 報酬を伴う活動は、原則として事前の許可確認が必要 地方公務員法、教育公務員特例法、自治体の兼業規程
私立学校の教員 地方公務員法ではなく、雇用契約や学校法人の規程が基準 就業規則、雇用契約書、兼業・副業規程
公立学校の非常勤講師 「非常勤」という呼称だけでは判断できない 辞令、任用通知書、正式な任用形態
フルタイム会計年度任用職員 地方公務員法第38条の対象として扱われる 任命権者の許可手続き
パートタイム会計年度任用職員 第38条による一律の制限対象からは除かれるが、届出等を求める自治体がある 自治体の服務規程、兼業届、任用条件
本記事は、2026年7月10日に法令データ提供システム、公的機関の資料および自治体例規を確認して作成した一般的な解説です。
筆者は弁護士、社会保険労務士、税理士ではなく、Webスキル副業について一次資料を調べ、中立的に整理する立場です。個別の許可判断は所属先や教育委員会へ、税務判断は税務署、自治体の税務窓口、税理士などへ確認してください。
教員の副業ブログは可能?立場別の許可ルール
教員が個人ブログを開設すること自体と、ブログから継続的に報酬を受け取ることは、同じ扱いになるとは限りません。
まず「文章を書く」「公開する」「収益を得る」の三段階に分けると、判断のポイントが見えやすくなります。
広告を掲載していない日記や情報ブログであれば、直ちに営利活動へ当たるとは限りません。
しかし、広告配信、アフィリエイト、教材販売、有料相談、企業からの執筆依頼などを始めると、報酬を得る事業・事務として許可や届出の確認が必要になります。
公立学校の常勤教員は地方公務員法第38条が出発点
公立学校の常勤教員は、原則として地方公務員です。
地方公務員法第38条第1項は、任命権者の許可を受けずに、次の行為をすることを制限しています。
- 営利企業の役員などを兼ねる
- 自ら営利企業を営む
- 報酬を得て事業または事務に従事する
法律に「ブログ」「アフィリエイト」「広告配信」という言葉が直接書かれているわけではありません。
そのため、ブログ名や収益額だけではなく、誰が運営し、何を継続的に行い、どの仕組みで報酬を得るのかという実態を基に判断されます。
たとえば、広告を一度設定した後に自動で配信される仕組みでも、サイトを更新し、閲覧者を集め、広告報酬を受け取る運営を続けるなら、営利性のある活動として検討される可能性があります。
ここで注意したいのが、「月に数百円だから許可はいらない」とは限らないことです。
第38条は収入額だけを基準にした規定ではありません。活動の継続性、作業時間、契約関係、本務への影響、職務上の利害関係なども確認対象になり得ます。
教育ブログなら教育公務員特例法第17条で認められる?
教育公務員特例法第17条第1項は、教育公務員が教育に関する他の職を兼ねたり、教育に関する事業・事務へ従事したりする場合について定めています。
本務の遂行に支障がないと所定の許可権者が認めた場合は、報酬の有無にかかわらず、その活動へ従事できます。
県費負担教職員については、同条の文言上、教育に関する兼職等を認める主体は市町村教育委員会です。一般的な任命権者の扱いと異なるため、所属校だけで判断を完結させず、教育委員会の手続きを確認する必要があります。
ただし、教育をテーマにしたブログなら自動的に第17条で認められる、という制度ではありません。
次の二つは、どちらも教育に関係しますが、活動の性質が異なります。
- 教育団体の依頼で研修用の記事を書き、謝金を受け取る
- 個人ブログで学習教材や民間サービスを紹介し、成果報酬を受け取る
前者は、教育に関する事業・事務との関係を説明しやすいでしょう。
一方、後者は紹介対象、契約先、読者との関係などによって、一般的な営利活動としての検討も必要になります。
教育公務員特例法第17条は、地方公務員法第38条を無視してよいという意味ではありません。活動内容に応じ、どの規定に基づく手続きが必要かを教育委員会へ確認することが大切です。
私立学校の教員は就業規則と雇用契約で判断する
私立学校の教員は、通常、公立学校の教員と同じ地方公務員ではありません。
副業ブログの可否は、主に次の文書を基準に判断します。
- 就業規則
- 雇用契約書
- 兼業・副業規程
- 秘密情報管理規程
- SNS・インターネット利用規程
- 教材や知的財産に関する規程
私立学校だから自由に副業できるとは限りません。
学校法人によって、事前許可制、届出制、条件付き容認、原則禁止など、運用はさまざまです。
就業規則に「副業」という項目が見つからないときは、「兼業」「営利活動」「個人事業」「外部活動」「競業」「他社業務」といった言葉でも探してみましょう。
規程が曖昧な場合は、ブログのテーマ、収益方法、作業時間を具体的に示して、人事担当者や管理職へ確認します。口頭だけで終わらせず、申請書やメールなど、回答を後から確認できる形で残しておくと認識のずれを減らせます。
非常勤講師の副業ブログに許可は必要?
非常勤講師は、常勤教員より副業しやすい場合があります。
ただし、「非常勤講師」という日常的な呼び名だけで、許可が不要だとは判断できません。
公立か私立か、一般職か特別職か、会計年度任用職員か、パートタイムかフルタイムかによって、適用される制度が変わります。
辞令や労働条件通知書で正式な身分を確認する
学校現場では、契約や任用形態が異なる職員を、まとめて非常勤講師と呼ぶことがあります。
服務上の扱いを調べるときは、名札や校内での呼称ではなく、次の書類を確認してください。
- 辞令
- 任用通知書
- 雇用契約書
- 労働条件通知書
- 募集要項
- 服務に関する案内
特に確認したい項目は、次のとおりです。
- 任命権者または雇用主
- 公立学校か私立学校か
- 一般職か特別職か
- 会計年度任用職員か
- パートタイムかフルタイムか
- 任用期間
- 兼業の許可・届出方法
- 他の勤務先を含む労働時間の申告方法
同じ学校で働く非常勤講師がブログを収益化していても、その人と自分の任用形態が同じとは限りません。
「同僚がしているから大丈夫」ではなく、自分の書類を起点に確認するのが確実です。
パートタイムとフルタイム会計年度任用職員の違い
地方公務員法第22条の2第1項では、会計年度任用職員を二つに分けています。
第1号は、一週間当たりの通常の勤務時間が常時勤務を要する職に比べて短い、パートタイム会計年度任用職員です。
第2号は、一週間当たりの通常の勤務時間が常時勤務を要する職と同一の、フルタイム会計年度任用職員です。
地方公務員法第38条第1項の括弧書きでは、同法第22条の2第1項第1号に掲げる職員、つまりパートタイム会計年度任用職員を、同項の対象から除いています。
したがって、全国共通の法的整理としては、次のようになります。
- フルタイム会計年度任用職員:地方公務員法第38条第1項による営利企業従事等の制限対象
- パートタイム会計年度任用職員:同項による一律の制限対象から除外
ただし、パートタイムだから勤務先への確認が一切不要になるわけではありません。
地方公務員法第33条の信用失墜行為の禁止や、第34条の秘密を守る義務などは別に問題となります。自治体が独自に兼業届の提出や、職務への支障、労働時間、利害関係の確認を求めることもあります。
たとえば、岡山県人事課の「職員の営利企業への従事等の制限について」では、短時間勤務会計年度任用職員の兼業は一律に制限されないと整理したうえで、兼業を希望する場合に届出書の提出を求める運用が示されています。
同資料は、対象職員について、常勤の一般職員、任期付職員、臨時的任用職員、フルタイム会計年度任用職員などを列挙しています。そのうえで、短時間勤務会計年度任用職員については別の扱いを明記しています。
また、墨田区の「学校職員の兼業等及び教育公務員の教育に関する兼職等に関する事務取扱規程」第4条第2項では、会計年度任用職員の兼業許可を学校長が行うと定めています。
同規程第5条では、職務遂行への支障、心身の疲労による能率低下、利害関係、学校教育上の問題、信用失墜のおそれなどを不許可の判断項目としています。
この違いから分かるのは、法律上の適用範囲と、自治体が定める申請・届出手続きは分けて確認する必要があるということです。

公務員のブログ・アフィリエイトは収益方法で何が変わる?
同じブログでも、広告、アフィリエイト、教材販売、企業案件では、報酬が発生する仕組みと責任の範囲が違います。
所属先へ相談するときは、「ブログを始めます」だけでなく、収益方法を分けて説明しましょう。
収益方法 主な仕組み 許可確認で整理する項目
広告収入 閲覧数や広告配信などに応じて報酬が発生 運営主体、更新頻度、作業時間、広告内容
アフィリエイト 購入や申込みなどの成果に応じて報酬が発生 紹介商品、契約先、学校関係者との利害関係
教材・デジタル商品販売 自作コンテンツを販売する 著作権、職務上作成した資料との区別、販売対象
記事執筆・監修 企業や団体の依頼を受けて業務を行う 依頼元、業務内容、報酬、納期、教育との関連性
有料相談・講座 個人へ知識や指導を提供する 顧客、実施時間、資格表示、勤務校との関係
広告収入は自動配信でも確認対象になり得る
Web広告は、設定後に広告が自動表示される仕組みが一般的です。
しかし、「広告が自動で出るから労働ではない」「振込みを受けるだけだから副業ではない」とは言い切れません。
サイトを制作し、記事を更新し、閲覧者を集め、広告報酬を受け取る仕組みを管理しているなら、本人が営利性のある活動を運営していると評価される可能性があります。
相談前には、次の内容をA4用紙1枚ほどにまとめると説明しやすくなります。
- サイトのテーマ
- 想定する読者
- 広告配信事業者
- 更新頻度
- 月の作業時間
- 作業する場所と端末
- 報酬の受取方法
- 勤務校の情報を使用しない方針
収益額を予測できない段階でも、仕組みと作業内容は説明できます。
アフィリエイトは紹介先との利害関係に注意する
アフィリエイトは、読者が商品を購入したり、サービスへ申し込んだりしたときに成果報酬が発生する仕組みです。
教員が教育サービス、学習教材、塾、資格講座などを紹介する場合は、職務上の立場との混同を防ぐ必要があります。
特に避けたいのは、次のような運用です。
- 児童生徒や保護者へ特定の商品を直接勧める
- 勤務校でブログや商品の案内を配布する
- 授業や面談で紹介コードを伝える
- 学校や教育委員会の推奨商品であるように見せる
- 教員の肩書だけを根拠に効果を断定する
- 広告であることを隠して紹介する
紹介する商品が教育関連だからこそ、読者は教員の発言を学校の評価と混同するかもしれません。
筆者としては、一般的な商品を紹介する場合よりも、教育商品を紹介する場合のほうが、勤務先との利害関係や肩書の使い方を丁寧に説明する必要があると考えます。
教材販売は職務上の資料と分離する
自分で作ったプリントやスライドであっても、自由に販売できるとは限りません。
作成した時間、使用した資料、勤務先の規程、他者の著作物の有無などによって、権利関係が変わるためです。
教材販売を考えるときは、次の点を確認してください。
- 勤務時間中に職務として作ったものではないか
- 学校のパソコンやソフトウェアで作成していないか
- 学校法人や自治体の知的財産規程に定めがないか
- 教科書や問題集の文章・図版を転載していないか
- 市販教材の問題を少し変えただけになっていないか
- 生徒の答案、作品、写真、音声を含んでいないか
- 同僚が作成した資料や校内共有資料を使っていないか
- 使用したフォントや画像素材が商用利用に対応しているか
- 校名、校章、学校独自の書式を使用していないか
「自分が作ったから自分のもの」とも、「学校で使ったからすべて学校のもの」とも、一律には判断できません。
販売前に、作成経緯と使用素材を一つずつ確認しましょう。
企業からの執筆・監修は契約内容を示す
企業や団体から記事執筆、監修、講座制作を依頼される場合は、誰かの依頼に基づき、報酬を得て業務を行う関係が明確になります。
所属先へ相談するときは、依頼メールだけを見せるのではなく、次の内容を整理します。
- 依頼元の名称
- 記事や講座のテーマ
- 作業内容
- 納期
- 報酬
- 想定作業時間
- 著者名や肩書の表示方法
- 勤務先との利害関係
- 継続契約か単発契約か
文部科学省初等中等教育局が2021年2月17日に発出した「『学校の働き方改革を踏まえた部活動改革について』を受けた公立学校の教師等の兼職兼業の取扱い等について(通知)」では、学校以外の主体が実施する地域部活動に教師が従事する場合、兼職兼業の許可を得たうえで活動できることが示されています。
これはブログ収益化を直接認めた通知ではありません。
ただし、教育に関係する外部活動でも、活動を始める前に、内容、時間、報酬、健康管理への影響を確認するという考え方が示されている点は参考になります。
教員がブログを収益化する前の申請手順
教員ブログの収益化は、広告を設置して報酬が発生してから報告するより、計画段階で確認するほうが進めやすくなります。
完璧な事業計画書は必要ありません。次の6段階に分ければ、最初の一歩はそれほど大きくありません。
1.自分の正式な身分を確かめる
辞令、任用通知書、雇用契約書、労働条件通知書を確認します。
公立・私立、常勤・非常勤、パートタイム・フルタイム、一般職・特別職のどれに当たるのかを整理してください。
2.所属先の規程を探す
「副業」という言葉だけでは見つからないことがあります。
次の語句でも規程やイントラネットを検索しましょう。
- 兼業
- 兼職
- 営利企業
- 報酬
- 外部活動
- 個人事業
- 情報発信
- SNS
- 秘密保持
- 知的財産
見つからない場合は、校長、管理職、人事担当、教育委員会の服務担当部署へ確認します。
3.ブログの運営計画を一枚にまとめる
申請先が知りたいのは、ブログという言葉ではなく、実際の活動内容です。
次の項目を一枚にまとめてください。
- ブログのテーマ
- 運営目的
- 想定読者
- 広告や販売の有無
- 契約予定の事業者
- 月の作業時間
- 作業する曜日と時間帯
- 使用する端末と通信環境
- 勤務校との利害関係
- 個人情報を扱わないための対策
URLが完成していなくても、計画段階で相談できます。
4.所定の相談先へ事前に確認する
公立学校では、校長を通じて教育委員会へ申請するなど、自治体が定めた流れに従います。
私立学校では、人事担当者や管理職など、学校法人の規程で定められた相談先を確認します。
相談時には「ブログをしたい」だけでなく、「個人サイトに広告を掲載し、月に約何時間、勤務時間外に自宅で更新する予定です」と具体的に伝えましょう。
5.許可や届出が必要なら収益化前に行う
許可が必要な場合は、決定を受ける前に広告を配信したり、商品を販売したり、報酬のある依頼を受けたりしないようにします。
ブログの準備作業をどこまで進めてよいかも、必要に応じて確認してください。
非収益で記事を準備することと、広告契約を結んで収益を発生させることでは、扱いが異なる可能性があります。
6.収益方法を変えるときは再確認する
当初は広告収入だけだったブログに、教材販売や企業案件を追加すると、活動の性質が変わります。
次の変更を行う前には、当初の許可範囲に含まれるかを確認しましょう。
- アフィリエイトを追加する
- 有料教材を販売する
- オンライン講座を始める
- 個別相談を有料化する
- 企業案件を受ける
- 監修者として名前を出す
- 法人化する
- 外部スタッフへ業務を依頼する
申請書、許可通知、担当者からの回答は保存しておくと、変更時に説明しやすくなります。

教員ブログで守るべき服務規律と避けたい運用
兼業の許可を得ても、ブログの内容や作業方法によって別の問題が生じることがあります。
特に重要なのは、信用失墜行為の禁止、秘密を守る義務、職務専念義務です。
匿名でも信用失墜行為や守秘義務は消えない
地方公務員法第33条は、職員がその職の信用を傷つけたり、職員の職全体の不名誉となったりする行為を禁じています。
同法第34条は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならないと定め、退職後もその義務が続くとしています。
匿名ブログやペンネームであっても、これらの義務がなくなるわけではありません。
注意したい発信には、次のようなものがあります。
- 勤務校や管理職への一方的な攻撃
- 生徒や保護者を嘲笑する内容
- 校内会議や生徒指導の具体的な記録
- 成績、進路、健康状態、家庭環境
- 未公開の人事や組織情報
- 校内システムの画面
- 生徒の作品、答案、写真、音声
- 学校限定のマニュアルや様式
氏名を書かなければ個人情報にならない、とは限りません。
学年、地域、家庭状況、行事、時期、トラブル内容などを組み合わせると、本人や関係者を推測できることがあります。
教育現場で得た知見を記事にするときは、実在する生徒の出来事を加工して使うのではなく、複数の事例から一般化した考え方を、自分の言葉で新たに構成することが大切です。
秘密をぼかして掲載するのではなく、秘密を材料にせず価値を作る。
この線引きは、教員ブログを続けるうえで大切なガードレールになります。
勤務時間と学校設備をブログ運営に使わない
地方公務員法第35条は、法律や条例に特別な定めがある場合を除き、勤務時間と職務上の注意力を職責の遂行に用いることを求めています。
勤務中に次の作業をすることは避けましょう。
- 記事を書く
- アクセス解析を見る
- 広告報酬を確認する
- コメントへ返信する
- 取引先と連絡する
- 商品を発送する
- SNSでブログを宣伝する
学校の設備やアカウントも、個人ブログとは明確に分けます。
- 私物のパソコンやスマートフォンを使う
- 個人用メールアドレスを用意する
- 学校のWi-Fiを使わない
- 校内プリンターで原稿を印刷しない
- 学校のクラウドへ原稿を保存しない
- 勤務時間外に作業する
- 睡眠や授業準備を圧迫しない作業量にする
許可された兼業であっても、勤務時間内の私的作業まで認められるわけではありません。
家族名義や少額収入で手続きを避けない
本人が記事を書き、広告を選び、サイトを管理しているのに、広告契約や振込口座だけを家族名義にする方法は避けるべきです。
誰の口座に入金されたかだけではなく、誰が実質的に活動しているかが問題になります。
匿名運営も同じです。ペンネームは読者へ公開する情報を限定する方法であり、勤務先の手続きを省略する根拠にはなりません。
また、「所得が20万円以下なら勤務先への申請はいらない」という情報にも注意してください。
20万円という数字は、一定の給与所得者について、所得税の確定申告が必要になる条件の一つです。地方公務員法や勤務先の兼業規程が定める許可基準ではありません。
国税庁の「給与所得者で確定申告が必要な人」では、主に次の条件が示されています。
- 1か所から給与を受け、給与の全部が源泉徴収の対象となる人は、給与・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超える場合
- 2か所以上から給与を受ける人は、年末調整されなかった給与収入と、給与・退職所得以外の所得金額との合計が20万円を超える場合
2か所以上から給与を受ける場合には、単純に「ブログの利益だけが20万円以下か」を見る制度ではありません。
さらに、所得税の確定申告をしない場合でも、住民税の申告が必要になることがあります。
次の三つは、別々に確認してください。
- 勤務先の兼業許可・届出
- 所得税の確定申告
- 住民税の申告
20万円は、無許可で副業できる上限ではありません。
教員の副業ブログはどう判断される?3ケースを分析
ここからは、法令と自治体規程に共通する審査項目を基にした筆者の見解です。
全国の規程を一つの基準にまとめることはできませんが、多くの許可判断では、次の点が重視されると考えられます。
- 本務の遂行に支障がないか
- 疲労により職務能率が低下しないか
- 勤務先や職務との利害関係がないか
- 公務の公正性を疑われないか
- 学校や教員の信用を損なわないか
- 秘密や個人情報を使用しないか
- 活動時間や報酬が社会通念上相当か
これらを、ブログで想定される三つのケースに当てはめます。
ケース1:勤務時間外に広告掲載ブログを運営する
自宅で私物の端末を使い、学校とは関係のないテーマの記事を書き、広告収入を得るケースです。
この場合に説明しやすいのは、勤務先との利害関係を切り分けられる点です。
ただし、継続して記事を更新し、広告契約に基づいて報酬を受け取るため、活動の規模や金額にかかわらず、常勤の公立教員は事前に許可の要否を確認する必要があります。
審査で分かれやすいのは、月の作業時間、本業への影響、広告内容、教員の肩書の使い方だと考えられます。
「広告を貼るだけ」と小さく説明するより、運営時間や情報管理の対策まで正直に示すほうが、第三者が判断しやすくなります。
ケース2:月1本、教育企業の記事を執筆する
教育企業から依頼を受け、月に1本の記事を書いて報酬を得るケースです。
単発に近い仕事で作業時間が短くても、報酬を得て事務へ従事する関係は明確です。
教育に関係する仕事であれば、教育公務員特例法第17条との関係も検討されます。しかし、「教育企業からの依頼だから認められる」とは限りません。
依頼元が勤務校と取引していないか、教材選定などの職務と関係しないか、記事内で学校名や教員の肩書をどう表示するかが重要になります。
個人的には、教育分野の仕事は本務との関連性を説明しやすい一方、利害関係も生まれやすい点が特徴だと考えます。
ケース3:自作教材を継続販売する
自分で作成した教材を販売サービスに登録し、継続的に販売するケースです。
この活動は、広告掲載よりも確認項目が多くなります。
教材の権利、使用素材、顧客対応、販売責任、価格設定、学校教材との区別などが加わるためです。
特に、勤務校で使った資料を販売する場合は、職務上作成したものか、学校の情報や書式が含まれていないかを慎重に確認しなければなりません。
許可判断だけでなく、著作権や個人情報の問題を分けて確認する必要があります。
この三つを比べると、ブログの許可判断は「教育ブログか、雑記ブログか」というテーマだけでは決まりません。
収益の仕組み、契約相手、作業時間、販売物、職務との接点を分解するほど、判断の輪郭がはっきりします。
教員ブログを無理なく続けるための筆者の考察
筆者としては、教員の副業ブログで最も重要なのは、収入の大きさよりも、運営内容を第三者へ説明できる状態にしておくことだと考えます。
収益が少額でも、無許可でよいと自己判断し、学校の設備で更新し、生徒の具体的な出来事を記事に使えば、兼業、職務専念、守秘義務など、複数の問題が重なる可能性があります。
反対に、活動内容を事前に示し、必要な手続きを行い、学校の設備や情報を使わず、本業に支障のない範囲で運営すれば、自分が何を基準に行動したのかを説明できます。
私は、服務規程をブログの前に立つ高い壁ではなく、道路脇のガードレールのようなものだと感じています。
自由をすべて奪うものではなく、「ここから先へ進む前に確認しよう」と教えてくれる境界線です。
もう一つ大切なのが、収益方法ごとに許可範囲を管理する視点です。
ブログは、広告を一つ掲載して終わるとは限りません。閲覧者が増えると、企業案件、監修、教材販売、講座制作など、当初とは異なる提案が届くことがあります。
最初の申請を「ブログ運営」という大きな箱だけで済ませると、後から新しい活動を追加したときに、許可範囲へ含まれるか分からなくなります。
広告、アフィリエイト、販売、受託を別々に整理し、変更前に確認できるよう、申請内容と回答を保存しておく方法が現実的です。
また、最初から収益化を急ぐ必要もありません。
まずは正式な身分を確認する。次に規程を探す。そして、書きたいテーマや作業時間を一枚にまとめる。
この三つなら、今日からでも小さく始められます。
完璧じゃなくて大丈夫です。分からない部分を一つずつ確認し、続けながら運営方法を整えていきましょう。
まとめ
教員の副業ブログは一律禁止ではありませんが、報酬を得る活動を始める前に、身分と所属先の規程を確認する必要があります。
公立学校の常勤教員とフルタイム会計年度任用職員は、地方公務員法第38条を踏まえた事前確認が基本です。教育に関する外部活動では、教育公務員特例法第17条との関係も確認します。
私立学校の教員は、学校法人の就業規則や雇用契約が判断の出発点です。
パートタイム会計年度任用職員は、地方公務員法第38条第1項の一律の制限対象から除かれますが、自治体独自の届出や許可手続きが設けられている場合があります。
広告、アフィリエイト、教材販売、記事執筆では、契約関係と責任の範囲が異なります。「ブログ」という一言でまとめず、収益方法ごとに活動内容を整理してください。
匿名、家族名義、少額収入という理由だけで、服務上の手続きが不要になるわけではありません。
自分の身分を確認し、運営計画を一枚にまとめ、収益が発生する前に所定の相談先へ確認する。それが、教員としての責任とブログ活動を両立させるための土台です。
よくある質問
教員は収益化しなければブログを書いてもよいですか?
非収益の情報発信と、報酬を得る活動は分けて検討できます。
ただし、収益がなくても、職務上の秘密を掲載する、勤務時間中に更新する、学校や教員の信用を損なう内容を書くといった行為は問題になる可能性があります。
公立学校の教員はアフィリエイトをできますか?
許可を得たうえで認められる可能性はありますが、全国共通で自動的に認められる制度ではありません。
紹介商品、契約先、作業時間、勤務先との利害関係などを整理し、広告を稼働させる前に所属先の手続きを確認してください。
非常勤講師なら副業ブログの許可はいりませんか?
非常勤講師という呼び名だけでは判断できません。
辞令や任用通知書で、パートタイム会計年度任用職員、フルタイム会計年度任用職員、私立学校の雇用職員など、正式な身分を確認してください。
教育ブログなら教育公務員特例法第17条で自由に収益化できますか?
教育をテーマにしているだけで、自動的に認められるわけではありません。
活動内容、依頼元、報酬、本務への影響、職務上の利害関係を示し、所定の許可権者へ確認する必要があります。
副業所得が20万円以下なら勤務先への申請は不要ですか?
20万円基準は、一定の給与所得者に関する所得税の確定申告条件です。
勤務先の兼業許可・届出とは別の制度なので、所得が20万円以下でも服務上の手続きが必要な場合があります。給与を2か所以上から受ける場合や住民税の申告も、条件を分けて確認してください。
主な確認資料
- 「地方公務員法」第22条の2、第33条、第34条、第35条、第38条(e-Gov法令検索、2026年7月10日確認)
- 「教育公務員特例法」第17条(e-Gov法令検索、2026年7月10日確認)
- 文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課長「『学校の働き方改革を踏まえた部活動改革について』を受けた公立学校の教師等の兼職兼業の取扱い等について(通知)」2021年2月17日、2初初企第39号
- 岡山県人事課「職員の営利企業への従事等の制限について」第1「地方公務員の営利企業への従事等の制限」および短時間勤務会計年度任用職員に関する記載
- 墨田区教育委員会「学校職員の兼業等及び教育公務員の教育に関する兼職等に関する事務取扱規程」第3条から第5条
- 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」(2026年7月10日確認)
著者:桜庭 あかり(未経験からのWebスキル副業ガイド)



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